『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』考察/最も優しく、最も孤独なヒーローの誕生

トム・ホランド演じるMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)版のスパイダーマンは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で別次元から怪人たちを呼び寄せた際、彼らがいずれもスパイダーマンに殺される運命にあると知ります。

「そのまま元の次元に帰せ」と主張するドクター・ストレンジと、メイ叔母さんの「元の人間に治療してから帰してあげるのがヒーローの仕事」だという二つの主張の間で揺れていたピーターですが、メイ叔母さんの死の間際の後押しにより、怪人たちを治療する方針を固めることになりました。スパイダーマン作品恒例の「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という名言もここで出ました。

つまり現在のスパイダーマンは、市民を救う「親愛なる隣人」でありながら、メイ叔母さんの意志を継ぐ「悪役の救済者」でもあるのです。ノーウェイホームのラストで「スパイダーマン」として孤独の道を選んだピーターの唯一の支えは、メイ叔母さんの「悪役を含め、全員を救うヒーロー」という教えを全うすることでしょう。これまでの映画に無かった新しいスパイダーマンの今後の活躍が楽しみです。